私たちは、常々、犬は神様が遣わされた天使で、遣わされた家族を幸せにしてくれる役目を持っているのだと思っています。君のように賢くて美しい天使は、きっともう他の家族に遣わされているかもしれませんね。17年前の夏の暑い日にまるで呼び寄せられるように行ったペットショップで健ちゃんと出会い、15年以上の時を過ごしました。お兄ちゃんの旅立ち、そしてお姉ちゃんの結婚を見守り、役目を果たして神様のところに帰っていったんですよね・・・そして、悲しみに暮れていた私たちに麻菜を遣わしてくれました。麻菜はとてもいい子です。気は強いけどやさしくてとても賢い子です。茶々くんと健ちゃんを合わせたような素晴らしい子ですよ。本当に良い子を選んでくれてありがとうね！健ちゃんが大好きだったリラックスチェアは、今は麻菜がお気に入りで使っています。麻菜はちっちゃいから、ゆったり座っていますよ。
私が健ちゃんのことで一番好きだったのは夕食後、私が食事を済ませるのを待つようにして抱っこをせがみ、膝の上にのせると顔中をなめてくれたことです。ひとしきりなめると、満足したように和室の角に行って休んでいましたね。顔をなめられている時間は、何にも代えることのできないとてもとても幸せな時間でした。健ちゃんの胸の柔らかい毛を撫でながら幸せをかみしめていました。
健ちゃん、今日は君にひとつ伝えなければならないことがあります。君が16年と8か月間過ごした家のことです。健ちゃんが旅立った後、私たちは、ひっそりと過ごしていましたが、そんな私たちを気遣って、健ちゃんはお兄ちゃんと相談して麻菜を遣わしてくれたんですよね。それをきっかけに、私たちももう一度気持ちを切り替えて前に進むことにしました。そういえば、健ちゃんが去った後、英語の本の話は本決まりになり、これから一年はかあさんと一緒に英語の執筆活動を本格化することになりました。私も年を取ったとはいえ、まだまだ思い出の中だけに生きていくわけにはいきません。こちらでの人生がそう長くないことは確かですが、それでもあと15年、元気ならば現役生活を続けます。そこで、思い切って家を建て替えることにしました。麻菜とかあさんと3人が肩を寄せ合いながら楽しく生きていけるように、色々な工夫をした家にするつもりです。今日からみんなで暮らしていた家の解体が始まりました。引っ越しのとき、がらんとした家を見るのはとても寂しかったですし、今日、一部が崩されている家を見てきましたが、なんだか切ない気持ちになりました。みんなと過ごした家を壊してしまうことに抵抗はありましたが、もう一度前に進むためには必要なことだったのかもしれません。でも、健ちゃんや茶々くんの写真も位牌もみんな一緒に連れて行きます。ずっとずっと一緒にいるという約束は守りますよ。
今は、健ちゃんが大好きだった丘の上の散歩コースのすぐ近くに仮住まいをしています。麻菜と散歩しながら毎日健ちゃんのことを思い出させてくれる場所です。あともう少しだけ、そちらに行くまでの間、とうちゃんは頑張ってみます。だから、どうか私たちを見守っていてください。君に再び会える日まで。